Marten Parker Trio Diamond Edition 導入記

コロナ禍にあってリモートワークが中心となり、休憩時間に音楽を聴く愉しみが増えたことは、ちょっぴり複雑な気持ちでもある。コーヒーを一杯淹れるように、1曲を軽く流して一息つく。そんな気軽な聴き方が性に合ってる。

昨年、6月に新しいスピーカーMarten Parker Trio Diamond Editionをオーダーした。新しいスピーカは8月には、我が家に到着。ルフトハンザ航空のストもあって配送が遅れていたとのことだったが、コロナ禍の部材不足やロジスティクスの混乱のことを思えば、案外早く到着したことに驚いた。導入して1年経過したので、手短だがレビューしたいと思う。

Marten Parker Trio Diamond

外観について

特殊形状をしているわけでもなく、スピーカーとしては極めてシンプルな形状である。垂直方向は、わずか斜めに傾斜している。正面上部にAccuton社のダイアモンドツイータ1基とMarten製セラミックドライバー2基、背面下部にはAccuton社のパッシブラジエーターを2基備える。

ダイアモンドツィーター
セラミックドライバー
背面のパッシブラジエータ

仕上げはピアノブラックを選択した。部屋のトーンとあわせたかったので、個人的にはウォルナット仕上げよりもブラックが好みだ。表面は一点の曇りもなく、徹底的に磨き上げられている。美しい黒である。
エッジ部分のプロポーションも良い。梱包用カバーがあったので、普段はホコリがたまらないよう再装着して使おうと思ったが、エッジがあまりにもなめらかなので、滑って再装着できないほど。

エッジの仕上がりがなめらか

脚元は4点支持で安定している。Iso Acousiticsと共同開発されたアイソレータは重厚感があり、がっしりとベースに固定される。最近発売されたMartenの上位モデルに至っても、このアイソレータが採用されている模様。唯一の気になる点は、アイソレータの吸着力が強いことである。それだけ安定しているということだが、吸着力が強いので移動するのに苦労するかもしれない。あまり良くないが、アイソレータの下へ薄い布を敷き、床と密着しないようにしている。カーペットやスピーカーベースをお使いなら問題ないだろう。

ターミナルはWBTである。インタフェースとしてはシンプルで接続で特段困ることはなさそうだ。内部配線はJorma Designの最高級モデル「Statement」らしいが、外部から確認はできない。

インプレッション

例えるならば、快晴の空の下、高級スポーツカーでハイウェイを駆け抜ける爽快感。

スピーカーとして極めて優秀であることがわかる。音が耳に届くタイミングが正確であり、来てほしいときに音が届いてくれる。音がバラバラにならない。これが爽快感の正体だろう。スピーカーの応答性がよく、ハイスピードということなのだろう。
解像度についても申し分なく、弱音表現や楽器の聴き分けも可能となっていた。演奏者の技巧や表現に対し、より近い位置にシフトした感覚があり、音楽を聴く感動をあらためて実感する。


中高域の質感は特筆すべきものがある。人の声や吹奏楽器などに色気がある。特に女性ボーカルの響きは、なんとも贅沢である。声の余韻や響きが美しく、開放的である。力強く歌えば、その声は天高くどこまでも昇っていく。これが導入の決め手だった。
個人的にはAccuton社のダイアモンドツィーターを搭載したスピーカーは、共通してこの傾向があると思っている。

響きが心地よいという点で、フルートやオーボエなどの木管も良い。これらの楽器はメジャーな弦楽器と比べると、今までそれほど魅力的には感じていなかったので驚いた。

低域再生は明らかに拡充した。
セラミックユニットを補完するため、パッシブラジエーターを2基搭載していることが功を奏している。チェンバロの低音域やウッドベースの音も今までよりもしっかり出ていることが確認できた。

おすすめの試聴曲

Simone Kopmajer - Nothing's Gonna ChangeよりNothing's Gonna Change

シモーネ・コップマイヤーの「Nothing's Gonna Change」
特筆すべきと書いた中高域を存分に堪能できる一曲。
ボーカルとピアノだけのシンプルな構成であるため、ボーカルの良さが際立っている。
その美しい歌声は、Martenの開放的なサウンドによって夢見心地にさせてくれる。

導入を終えて

検討していた当時は試聴したいモデルが国内にないなど不安な点があったが、勇気を持って導入を決断したことに間違いはなかった。大満足である。
1年経過して様々な音楽を再生してきたものの、いまだに多く驚かされること、ハッと気づかされることがある。
やはり基本性能が良いこともあって、Martenの潜在能力は相当高い。
セッティングやシステム構成などの組み合わせで、さらなる向上が期待されると思われるが、どのような方向性に持っていくのか悩ましい。

今回は率直に導入後の印象に絞って記事を書いてみた。
Octaveとの相性やエージングのことなど、もう少し書き足りないところがあるが、それは追々書いていこうと思う。